「第9地区」

この映画、公開時にはかなり話題となりました。無名の新人監督のニール・ブロムカンプが作ったB級映画がアカデミー賞全4部門にノミネートという好成績を残すことに成功。プロデューサーはピーター・ジャクソン(映画「ラブリーボーン」の監督)ですがこれはれっきとした低予算の自主制作映画です。


とにかくすごいのはすごいです。

ストーリーの予測はだいたい自然につけていってしまうのが通常ですがこれはまったく予測不能。そんな予定不調和な出来事に、はやばやと先を読むことを諦めてしまった。

といっても要点はそこではなく、いろんな社会問題を詰め込んでいるというとこ。それなのに観客に拒否されず受け入れられているのは全てを比喩として撮っているということが大きい。情け容赦ない社会風刺を、コメディの要素もあり、人間ドラマもあり、といった感じで、バランス良い力加減でブレンドしている。


しかし現実を突きつけるならばここに描かれていることは現実そのものです、ということ。

たとえば移民という設定のエイリアンは、実際の人間の移民です。というのも、劇中で一般人がテレビのインタビュアーにエイリアンについてどう思っているかの質問に対して答えているシーンがあるが、これは実は一般の人達の、移民(エイリアンではなく現実世界の)に対してのインタビューを撮ったものを差し込んでいるのだとか。


これは、人種差別やアパルトヘイト、スラム化、企業の拝金主義などなどのキツイ現実を、最高のエンターテイメントとしてミックスしてサラリと独創性あふれるSF映画にしてしまったまさに映画オタク2人の傑作であるといえる。

観客は最初に視覚で判断していたことがラストには、そんなものは判断の対象にならないと気付くことになる。