欲と怒り

”人は、自分の欲も怒りも可愛いものです。自分には正当な理由があって怒っているのだと正当化さえします。人にとって怒りと欲は、自分の心に咲いた花のようなものです。しかし、いつまでも持ち続けるのではなくそれは捨てた方が安全なのです。私達は、怒りと欲によって心身が消耗しています。

いつも「戦わなくてはいけない」「負けるものか」という気持ちでいる人がいます。どんな話をしても否定的な意見ばかり述べ、いつも相手を批判しています。ふとした言葉にも怒気が含まれ、つねに周囲に威圧感を与え、恐怖感をまき散らします。

また、世の中は「もっともっと」という欲で動いています。それはまるで喉が渇いた人がさいげんなく水を欲するように、私達があらゆるものを欲しがるからです。

怒りと欲によって、わたしたちは、わけもなく悩み、困っています。悩みというものは猛烈な炎のようなものです。自分の身体から生まれてくる悩みという炎によって、体は痛めつけられるのです。こういう状態が続くと、胃酸がたくさん出るなど、臓器がおかしな活動をしてしまいます。心身のバランスがくずれれば、やがて病気になってしまいます。

よく「ある日、突然、病に襲われた」という話を耳にしますが、そんなことはありえません。それまでの生活のあり方、生き方が大きな影響を及ぼしているからです。ただ自覚症状がなかっただけのことです。怒りと欲で心身が消耗すれば、やがて体調に異変が生じ、病を患うようになってしまうのです。”  (A・スマナサーラ