「これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫」

「私もあなの数多くの作品のひとつです」


これはタモリさんが赤塚不二夫さんへ送った弔辞なのは有名。

タモリさんを世に送り出すために自宅に住まわせ、自分は仕事場のロッカーの上で眠っていたという。そんな肉親以上の関係を築いたタモリさんだけにしか発することのできない言葉であった。


赤塚不二夫
1935年旧満州生まれ。56年少女漫画「嵐をこえて」でデビュー。その後、トキワ荘に入居し、石ノ森章太郎藤子不二雄らとともに漫画の新時代を築く。l穴埋めのために描いたギャグ漫画「ナマちゃん」がヒットし、そのまま連載となる。「おそ松くん」「天才バカボン」などの代表作は軒並みアニメ化され、国民的人気を博す。アルコール依存症、食道ガン、脳内出血など、闘病の晩年を過ごした。2008年8月2日、72歳で死去。


で、今回の映画は


(この予告編は個人的にはあまり好きではない。興味のない人にとっては悪ふざけ映画としか取られかねない。実際は、主演2人の演技の秀逸さが相まっていうことなし。とても真面目にふざけていて感動した。)


赤塚不二夫と、担当編集者・武居俊樹の35年間の交流を実話に基づいて描く伝記ドラマ。武居の著書「赤塚不二夫­ことを書いたのだ!!」を基に、天才と呼ばれた男の破天荒な生きざまに迫る。赤塚を浅野忠信が演じるほか、武居を性別を越えて堀北真希がキュートに好演。盟友との衝撃的な­出会いや伝説のエピソード、そしてギャグに人生をささげた奇才の人物像に驚かされる。”
配給: 東映
オフィシャルサイトhttp://www.iinoda.jp/
(C) 2011「これでいいのだ!!」製作委員会


時代を感じさせるというか、学生デモ隊と警察の機動隊が乱闘に明け暮れていた時代も描かれていて「夜の新宿 無法地帯 駅構内無残に荒廃」新宿デモに騒乱罪適用なんてこともあったりして、今の日本でこういうこと起こっても不思議ではないなと思ったり。まあでも現代ではネットがその役割を果たしていることが大きかったりする。

振り返ってみると「バカボン」という漫画はそれほど読んだことはないのだけど、幼少期にテレビで見ていたような記憶はある。が、「バカボン」より「おそ松くん」の方の記憶が濃い。(たぶん子供ながらに主人公が6人いてどれも同じ顔というのが強烈だったのだろう)


最近になってこの「バカボン」が実はすごい漫画だということを知ることになり、そして今回鑑賞することとなった。


バカボン」とは仏教語「簿伽梵(バギャボン)」からきていて、サンスクリット語でいうBhagavad(ヴァガヴァッド)でブッダのこと。つまり自己の意識を自由にあやつる天才を意味している。という仏教的マンガだった。

バカボンのパパ早稲田大学のとなりの「バカダ大学」の秀才で、同期のママと結婚して子供ができたんだけど、生まれたのはダウン症の子だった。そのショックでふらふらと道に出たら車にはねられて、頭を強く打ったパパは起き上がり一言、「これでいいのだ!!わしはバカボンのパパになるのだと」と。

その時から名前も”バカボンのパパ”になって、いつでもこれでいいのだといって歩くようになったという秘話までもある。


そんな天才・赤塚不二雄を女手ひとつで育てた母ちゃんのすごさも少しだけ垣間見れるこの映画。母の在り方というか、やっぱりここぞという時には”ゲンコツ”、つまり鉄拳制裁も必要だよなと。雷のような天然自然の怒りは必要だと。特に母親がそれをする。「母」っていう存在は、だから特別なんだなと。でもこの辺がいつの時代からかあやふやになってきて。怒るだけなら誰でもできるってもんで、本人が仕事でもなんにしても責任もってできてるのかって話で。劇中でも1億円を騙し取られた赤塚さんは相手を訴えることなどせず「お金がなくなったら頑張って仕事をする!」と言っていた。


ということで、命懸けで万人を笑わせようとした赤塚不二夫さんの、そして彼を育てあげた、おおからで少しおっちょこちょいな母の、根底に流れる「面白いことがあるから生きる」「生きることは面白い」という精神、を見習っていきたいところ。自分が楽しく、じゃなくて誰かのために面白いことを。

もちろんそのジャンルは人それぞれであって、赤塚不二雄という人は「笑い」というジャンルに命を懸けた人だったのでした。